「バトン」
- 2009/06/17(Wed) -
                              (神戸新聞文芸児童文学部門 入選 2002年…か2001?)   
 

  12才の誕生日の朝。

  ママが鏡台の引き出しから 櫛を取り出した。

  半月形の櫛は 磨きこんだように つやつやしている。

  「プレゼントよ。 ゆんのひいおばあちゃんが使っていた つげの櫛。 おばあちゃんもママも 使ったの」 
   
   と ママ。

  「ゲームソフトの方がいい」 と あたし。

  「ケータイ電話を買ってあげたでしょ」

  「ママが仕事を始めるからって ママの都合で買ったんじゃん」

  「新曲をダウンロードしたのは ゆんよ。 友達とメールしてるのも ゆん。 料金払うのは 誰?」 

   ・・・ママの勝ち。

  「お誕生日おめでとう。櫛 大切にしてね」

  ママはにっこり笑うと 仕事に出かけた。

  あたしも急がないと遅刻。 ランドセルに教科書をつめこみ 奥にケータイを隠す。

  「櫛を忘れるでないぞ」 

  という声に あたしは飛び上がった。

  見知らぬ老婆が 目の前にいた。 老婆はおごそかに

  「我は 櫛のつくも神」

   と 告げた後 ニッと笑って 言った。

  「古い道具にゃ つくも神がついているって ふみちゃんに教わったろ?」

  ふみちゃん? おばあちゃんの名だ。

  「櫛を入れて。 ランドセルを背負って」

  つくも神は あたしをせかして外へ出ると 気持ちよさそうに伸びをした。

  「かなちゃんは長いこと 櫛を鏡台にしまいっぱなしだったねぇ」
  
  「ママのこと? ママも つくも神さんに会ったの?」

  「ママが こどもの頃にね」

  と つくも神が 水たまりを指した。
  
  すると 水たまりの中に 女の子があらわれた。

  あの櫛で 前髪をかきあげている。 これ ママ? 生意気そうな子。

  つくも神が 道沿いのショーウィンドーをなでると  おかっぱ頭の女の子が そこに映った。

  櫛を そっと 拭いている。

  「ふみちゃんさ」 と つくも神。

  おばあちゃん?  かわいいっ。

  「ひいおばあちゃんは?」

  つくも神が 路上駐車のサイドミラーを つついた。

  ミラーの中に 赤い着物の女の子。  髪に挿した櫛が よく似合っている。

  はじめまして ひいおばあちゃん。

  あちこちに映る 櫛の思い出を追いながら 学校に着いた。

  学校の大鏡の中に 若いママがいた。 赤ん坊を抱いている。 となりに おばあちゃん。

  肩越しに赤ん坊をのぞいているのは きっと ひいおばあちゃん。

  3人の よく似た やさしい顔。

  3人は なにか目に見えない すてきなもので つながっている。


  大切な櫛。 

  なのに あたし いつものくせで ランドセルを乱暴に机に放り出した。
        

  パキッ。

  かすかな音だった。
 
  けど 体が冷たくなった。 頭がジンジン しびれた。

  こわばった指で ランドセルを開けた。

  教科書とケータイの間で 櫛はふたつに割れていた。

  あたしは 櫛をつかんで 大鏡の前に走った。

  「つくも神さんっ」 と 叫んだ。

  「ひいおばあちゃんっ」 と 呼んだ。

  誰の返事も 聞こえない。 鏡の中には 青ざめたあたしだけ。

  それも 涙で見えなくなって・・・後は覚えていない。

  
  気がついたら 割れた櫛を抱きしめて 家の自分のベッドで丸くなっていた。

  真っ暗だから 多分 夜。

  さっき ママが おやすみなさいって言ってたような気がする。

  どこかで 聞き覚えのあるメロディが 繰り返し鳴っている。

  ケータイの着メロだ。 うるさいなぁ 放っといて。

  鳴り止まない。

  あたしは ノロノロと起き上がり ケータイをつかんだ。
 
  明るい声が 流れてきた。

  「やっと泣き止んだ? アタシ ケータイのつくも神。 

    こんな新しい道具につくなんて コケンにかかわるんだけれどね。
 
    櫛のつくも神に免じて 99年分 貸しにしとくわ」

  「櫛のつくも神さんは?」 あたしの声 消え入りそう。

  「アタシをケータイに産み落として 自然消滅 世代交代。

   また 泣くの?

   櫛のつくも神から 伝言を預かったわ。 いい? 」

  あたしはあわてて涙をふき ケータイを握り直した。

  「『ゆんが渡されたバトンは櫛じゃない。 もっと確かで素敵なものを受け取ったんだよ』 だって」

  「どういうこと?」

  「自分で考えなよ。 それよりこの着メロ ダサイ。 別の曲 探してくるわ」

  電話は そこで切れた。


  泣くのは止めて もう眠ろう。

  そして明日 元気な心でバトンの意味を考えよう。

  櫛 元通りにはならないけれど・・・ 直してみよう。

     
     ところで つくも神のケータイ使用料は 誰が支払うのだろう・・・?

  
                                                   (おしまい)
   
この記事のURL | 児童文学(作品) | ▲ top
ともしび
- 2009/06/13(Sat) -

                                ひとり 抱きしめていた ともしび

                                   
                                      呼ばれて

                                      呼び合って

                                      響き合って


                                     ココ二 イルヨ

                                     ココ二 イタノ

                                     ヒトリジャ ナイネ


                                 ひとり 抱きしめる ともしび

                                    きのうより あたたかい 

 
この記事のURL | 詩 (わたし) | ▲ top
ご近所猫
- 2009/06/09(Tue) -
                                        あ♪

                                         。   
                                       
                                         。

                        DSC00018.jpg
                           

                                       イケニャン



 
                                         お?

                                          。

                                          。

                        DSC00020.jpg


                                      コワニャン(強面) 

                                          。

                                          。

                        DSC00022.jpg

                                        くふっ                  
この記事のURL | | ▲ top
| メイン |